バリバリ伝説 劇場版
なお、この作品はいずれもDVD-Video化されていません。
漫画作品のアニメ化では、頭の中で形成されたキャラクターイメージと声優の声とのギャップに違和感を覚えることが少なくないと思います。あくまでもイメージなので声を聞くわけじゃないのに不思議ですね。でも、この作品では、個人的には概ねイメージに近かったので、その点でも好感が持てました。
伊藤歩惟の声が荻野目洋子さん、っていうのは少し違っている気がしましたが・・・
逆に、聖秀吉は中尾隆聖さん以外考えられない、っていうほどイメージ通りです。
グンの田中秀幸さんもいい感じですね。
峠仕様に改造されたCB750Fに乗る巨摩郡、同じく改造GSX750S KATANAを手足のように扱い、隙のない走りをする聖秀吉。
対極の走りをするこの二人はバイクでもそれ以外でも激しく衝突しますが、鈴鹿4時間耐久レースの死闘を経て、大きな信頼関係を築くことになります。
しかし、苦労して生きてきた秀吉がやっと将来を掴みかけたその時、非情な運命は秀吉に死という結末を与えてしまいました。
ストーリーの主人公は巨摩郡ですが、僕個人的にはバリバリ伝説の第1部は絶対に聖秀吉。カタナへの憧れもここから始まっています。
そんな感動的な第1部をテンポよく、短時間にまとめたのが筑波編であり鈴鹿編であり、さらに劇場版であるわけですが、特に、鈴鹿4時間耐久レースの部分は大きな山場ですね。
初チャレンジながら天才的な走りで上位を狙う秀吉・グンのチームと、苦戦しながらもひたむきに走り、転倒・負傷した美由紀をかばって実力以上の走りをするヒロのチーム、そしてレースに出走した全てのチームが若い力をめいっぱい燃やして挑む、そんな姿が描かれています。
特に鳥肌モノなのが、転倒で周回遅れになった浜松レーシングの松井とイチノセレーシングの巨摩が激しい追い上げの末、最終コーナーを抜けたところで先頭を行くゼッケン5のマシンをメインストレートの先の陽炎の中に捉えた瞬間。クライマックスを盛り上げるBGMも非常に良く、目頭が熱くなるシーンです。
最終ラップで3台もつれてのドッグファイト、130Rでの先頭争い、スポンジバリアに飲み込まれたゼッケン5小野塚、そして、最終コーナーを立ち上がる2台、追い抜きにかかる松井。僅かな差で届かず、グンが先頭でチェッカーを受けます。
こんな感動的な4耐でしたが、ラストは、街道レーサーからの引退を決意した秀吉が、いつもの峠でのバトルの中、対向車と正面衝突して絶命してしまいます。
短い時間に詰め込んでいるので、この作品だけでは前後の経緯が判らないところが多々ありますが、個人的には一番好きな原作第1部のイメージを忠実に映像化した貴重な作品だと思います。
1980年代後半、バイクに乗りはじめた学生の頃にこの漫画に出会いました。ちょっと青くさいストーリーやクサいセリフも出てきますが、僕にとってバイクもバリバリ伝説も青春の象徴です。
■作品プロフィール■
【声の出演】
巨摩 郡:田中秀幸
伊藤歩惟:荻野目洋子
聖 秀吉:中尾隆聖
一ノ瀬美由紀:戸田恵子
沖田比呂:二又一成
聖 知世:平松晶子
ほか:
堀勝之祐 納谷六朗
北村弘一 中田譲治
清川元夢 向殿あさみ
高島雅羅 龍田直樹
大塚芳忠 橋本晃一
神代智恵 中原茂
柴本広之 関俊彦
小林十郎太 西村智博
立木文彦 大城まつみ
三井善忠
【主題歌】
OP スロープに天気雨 作詞:麻生圭子、作曲・編曲:高中正義
ED 少年の最後の夏 作詞:売野雅勇、作曲:筒美京平、編曲:鷲巣詩郎
歌:荻野目洋子
※「少年の最後の夏」はアルバム「246コネクション」収録
【時間】
85分
製作:加藤勝久
企画:平賀純男、内田勝
プロデューサー:鈴木良平、五十嵐隆夫、布川ゆうじ
原作:しげの秀一
脚本:渡邊由自、渡辺麻実
絵コンテ:上村修、池上誉優、案納正美
演出:上村修、池上誉優
作画監督:古瀬登
作画監督補佐:佐藤雄三
美術監督:水の尾純一、中座洋次
美術設定:佐藤正浩
撮影監督:杉山幸夫、鳥越一志、菅谷信行
録音演出:斯波重治
音楽監督:新田一郎
レコーディングディレクター:金子秀昭
音楽制作:ビクター音楽産業
録音制作:(株)オムニバスプロモーション
協力:
スタジオ エス・エス・オー
鈴鹿サーキット
筑波サーキット
ベストバイク社
本田技研工業
アニメーション制作:スタジオぴえろ
監修:鳥海永行
制作・著作:講談社