センターシール
2ストロークエンジンのクランクシャフト軸部には気密を保つためのシールがあり、並列あるいはV型の2気筒エンジンのクランクシャフト中央にあるものを一般にセンターシールと言っています。
RGV250ガンマ(VJ21A,VJ22A)では、ミドルベアリングに隣接して配置されるラビリンスシールと呼ばれるものが使われています。
これは非接触式で、簡単に言うと、シャフトとシールのすき間を入り組んだ形状にして、そこに入り込もうとする圧縮ガスやオイルなどの流体が迷路にはまって抜け出せないような状態になることからその名がついています。
入り組んだ形状と言っても、シャフトにリング状のシールを挿入しなければならないので、文字通り迷路のように複雑に噛み合った構造にするには部品構成が複雑になるため、基本的にはシールの内周部に数本の細かい溝を掘っただけのものが使われています。
但し、すき間は非常に小さいものなので、クランクベアリングが摩耗するなどしてシャフトの振れが大きくなるとシールもダメージを受け、一次圧縮漏れを起こすに至ります。
ちなみに、ヤマハのRZやTZRも確かラビリンスシールだったはずです。
一方、ホンダのNSR250Rは接触式のオイルシールが使われており、さらに途中のモデルからはミドルベアリングと一体になったシールが使われています。
以下の写真がNSR250Rのミドルベアリング兼センターシールです。
NSRではこのセンターシールが劣化して一次圧縮漏れを起こす、いわゆる「センターシール抜け」が問題になることが多々あります。
写真のベアリングはシール抜けを起こしたクランクシャフトから取り外したもので、オイルシールは硬化・変形し、さらにクラックも入っています。
非接触式のシール、接触式のシール、どちらが優れているのかは目的や考え方によるのかもしれません。レース用なら性能重視だし、公道専用なら耐久性重視になるし。
どんなものにも永久に使えるものはありませんが、NSRのクランクシャフトは比較的短いスパンでオーバーホールを考える必要があるようです。もちろん、どのような使い方でも絶対そうなるというわけではないようですが、維持には結構な覚悟とお金が必要そうですね。